« 2014年8月 | メイン | 2014年10月 »

2014年9月の1件の記事

2014年9月17日 (水)

上原家資料の展示

10月に三田で開催する第2回の展示には、長野県安曇野市の上原家より多数の資料をお借りして展示します。

上原家は、5人きょうだいの内、男3人が全員慶應義塾に学び、3人とも戦死されています。福沢研究センターでは、2009年の福沢諭吉展の際、慶應義塾の歴史を展示するコーナーに、特攻で戦死した三男上原良司の出撃前夜の「所感」と題した手記をお借りして展示したことがあります。また同家には、3人が幼少の頃からの資料が膨大に残されていることから、2010年から3兄弟の資料の目録化の作業を続けています。

こういったご縁から、今回は再度「所感」をお借りするほか、良司が恋人へのメッセージを潜ませた遺本『クロォチェ』、実家に残した遺書、またそれらを隠してあった本棚や物入れもお借りしています。

E7re8023kas_r上原良司「所感」冒頭

E7re8163kags_r丸印の字を繋げて読むと恋文になる良司の遺本『クロォチェ』


また、従来ほとんど知られていないお兄さんたちに関しても同様に展示し、ある一家における悲劇をより立体感を持ってクローズアップします。長男上原良春は、責任感が強いまじめな人柄。写真が趣味で、学生生活、故郷の風景や人々をカメラに収めています。次男龍男は、絵が得意で子供たちを喜ばせるのが好きな優しい性格。几帳面で日常の記録がたくさん残っています。

No8731213_r_r上原良春撮影:神宮での慶應応援席

E7re7990ks_r上原龍男画「祝兄貴之御進級」

3人に共通なのは、文章でものを伝える習慣が身についていることです。これはご両親の影響が強いようですが、3人の祖父が上原三川と号した子規門下の俳人であることも影響しているかもしれません。こういった家庭環境をより丁寧に見直すことで、「所感」など、良司の数点の遺稿だけではわからない戦時下の青年の心情をより深く見つめ直すことができるものと考えます。

展覧会

facebook

運営組織